贈る者−1−「はぁ…」大きくため息をつく女性。 街にはそんな人は沢山いる。 「あーあー…はぁ…」 さらに大きくため息をつく。 女性は家路をゆっくりと歩いていた。 「…」 「おねーさん」 目の前に、赤い服を着た少年が立っていた。 「私のこと?」 「そう、おねーさん」 少年はにっこり微笑んでこう続けた。 「僕は『贈る者』。おねーさんに贈り物を届けにきたんだ」 「は…?」 呆気にとられる女性。 「…あんたストーカー?」 「ひどいなぁ…違うよ!僕は『贈る者』だってば!」 いまいち少年の言っている言葉が理解できない。 「…私の名前言えたりする?」 「え…えーっと…忘れちゃった」 あはは。と笑う少年。 「…ストーカーじゃないみたいだけど…あんまりしつこいと人を呼ぶわよ?」 「え?あー…呼んでも構わないよ?」 「はぁ?」 少年はその場でくるりと回った。 「僕のことは、おねーさんにしか見えないから。もし誰か来てもおねーさんは頭がおかしい人って思われるかもね」 ちょっと困ったように言いながら少年は女性の顔を覗き込んだ。 「えーっと確か…」 ひらりと、どこからか紙が少年の手に納まった。 「は?」 不思議な光景だった。 紙は本当に「どこからか」現れたのだ。 「相田アカリさん…26歳…おーえる…アカリさんか」 どうやら自分の名前が書いてあるらしい。 「ちょと、あんた何者…もしかして死神とか!?」 「えー…死神さんみたいに上級な人たちは滅多にこっちにこないよぉ。僕は『贈る者』なんだから…」 困った顔つきに少年に、アカリは拍子抜け。 こんな可愛い少年が死神だったら楽しいのにとも思ったのは事実だが。 「…さっきからその『贈る者』ってなんなの?」 「あー…えっとね。僕の職業みたいなものかな。おねーさんみたいに『本当に欲しい物』を持つ人に『本当に欲しい物を贈る』のが仕事…かな?」 「へー…じゃぁ、新作のバックとか!?」 アカリの言葉に少年は首を横に振る。 「それはアカリさんが本当に欲しい物じゃないからダメ」 きっぱりはっきり言われてしまった。 「なにそれー!私あれすごく欲しいんだから!」 「アカリさんが『本当に欲しい物』は他にあるからダメ」 少年はさらに首を横に振る。 「…『本当に欲しい物』…彼氏とか?」 「それも違う。アカリさんはもう分かってるはずだけどなぁ」 少年は困った風に笑う。 「彼氏が欲しい…っていうか…あの人のそばに居たいとかじゃだめなのかな?」 アカリの言葉にそれも首を横に振る。 少年はその言葉を聞いてから、心配そうな顔になった。 「………私ね。好きな人がいるの」 少年が何者かわからないけれど、他の人に見えないなら話してもいいかもしれない。 何故か、少年には『信じられる何か』があるようで。 ついつい、誰にも話したことのない事を喋りはじめた。 「へぇー素敵だね!どんな人?」 「私の幼馴染なんだ…高校から大学までは別々だったんだけど、会社が一緒になってね」 嬉しそうに話すアカリに、少年は微笑んだ。 「ずーっと好きだったんだ…でもね…彼、この前告白されてたの…」 アカリの声が沈む。 「彼がどう答えたのかわからない…怖くて聞けないし…もし付き合ってたらって思うと…」 アカリの声には嗚咽が少しずつ混じっていく。 「…聞いてみればいいんだよ」 「…怖くて無理よ!!!」 「…大丈夫」 そっと、アカリの額に少年は手をあてた。 ――ほんのり、暖かい気がした。 「あれ?」 アカリはあたりを見回した。 「さっきの子は?」 どこにもいない。 「…『贈る者』…」 ―翌日。 「なんだよ。アカリ。こんなところに呼び出して」 早朝。 アカリは幼馴染をよく遊んだ公園に呼び出した。 「ねね、この前、告白されてたでしょ?返事どうしたの?」 「え…見てたのか…断ったよ」 アカリの唐突な質問に幼馴染は困ったように答えた。 「えー!?なんで?かわいかったじゃない」 「…俺の好きなやつは昔っから変わってないんでね…」 「え?」 ――お前が好きだから。 「おめでとうアカリさん。僕の『贈り物』は役にたったみたいだ」 少年はもう自分が見えなくなったアカリに微笑んだ。 「『ほんの少しの勇気』が僕の『贈り物』…お幸せにアカリさん」 少年は、そう言って消えた。 「ん?」 アカリは後ろを振り返った。 「どうした?アカリ」 「ん…なんでもないの」 ――有難う『贈る者』さん。 FIN |
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役にたちゃしないキャラ設定 贈る者−少年 外見年齢15・6歳 身長165センチ 体重45キロ(くらい?) *『贈る者』に年齢や体重の概念がありません。参考程度 相田アカリ 26歳 OL 身長160センチ 体重50キロくらい 優しそうな外見 |