贈る者−3−

「はい、本日はここまで」
 パタンと、赤い髪に薄緑色のツーツを着た女性が本を閉じた。
「お疲れ様」
 女性はそう言うと、部屋から出ていった。

 ここは教室のようなもの。
 明確な学校名があるわけではない。
 俗称としては『贈る者教育舎』。
 『贈る者』になる為に通っている者がいる場所。
 「あちら」と「こちら」の中間に位置していて、はっきり言える場所にない。
 そんな場所。

 先ほどの赤い髪の女性はいうなれば教師。

「はぁ〜〜」
 部屋でため息をつく少年。
 外見年齢は15歳くらいか、ちょっと弱気そうな面持ち。
 紺色のポロシャツに黒ジーンズという、『贈る者』らしい極普通の格好である。
「まーた、チューリップ先生に叱られてたな!」
 後ろから、白いシャツを来た青年に声をかけられた。
「うん…俺、目の敵にされてるのかなぁ…」
 落ち込む少年。

 部屋から出てとぼとぼと校舎を出る。
「よう、コン!久しぶりだな!」
 校舎の前で、声をかけられた。
「ん…あっ!オウさん!」
 声の主は、薄黄色いTシャツにベージュのチノパンを着た、落ち着いた雰囲気の青年だった。
「オウさんの『贈る者』話きかせてくださいよ。最近贈った物とか!」
 コンは嬉しそうにオウに聞いた。
「まぁまぁ、落ち着け。ちょっと元気なかったくせに」
 青年は笑いながら言った。
「あー…わかります…今日も先生に怒鳴られちゃって…」
「ふーん…怒鳴られるねぇ…」
 オウは頭をかいた。
「その先生って誰だ?」
「ん?チューリップ先生ですけど?」
 質問の意図がわからず、頭にハテナマークを浮かべながら答えた。
「あーそっかそっか、知らないんだな…チューリップ先生って見込みのある生徒しか怒らないんだぜ?」
 オウは笑いながら言った。
「そ、そうなんだ…でも…」
「あーあー…ったく…お前、『贈る者』になりたいんだろ?」
「なりたいですよ!…はぁ…もうちょっと前向きになれたらなぁ…」
「大丈夫だって…お前だってやればできるんだよ」
 項垂れるコンにオウは頭をポンポンと軽く叩いてやった。

「…あったか…ええ!?」
 オウの手のひらの温かさを感じた瞬間、オウが何をしたかわかった。
「まったく…『贈る者』候補に『贈る者』から『贈り物』たぁ…なかなかどうして」
 オウはケラケラと笑った。
「あ、ありがとうございます!」

「コン!ここにいたのか…」
 チューリップ先生が、校舎から出てきた。
「あれ?どうしました?」
 チューリップ先生はオウに目線を一瞬向けると、コンに視線を向けた。
「ひまわり先生が呼んでる…早くいけ」
「はい!」


「まさかこんなところに用事とはね」
 チューリップ先生はオウに微笑んだ。
「先生あいかわらずみたいですね…俺もよく怒鳴られたもんだ」
「それでセキに『贈り物』されただろう」
 くすくすと、チューリップ先生が笑った。
「先生の受け持ちの子はそういう運命なのかもしれませんね」
 はははっと、オウが笑った。


「まだまだ、『贈る者』までは遠いかもしれないけど、がんばるぞ!」
 コンは気合を入れて、走りだした。

「こらっ!舎内は走るな!」
 チューリップ先生の声が響いた。





FIN

役にたちゃしないキャラ設定

贈る者候補−少年  固有名詞「コン」
身長165センチ 体重55キロ(くらい?)
外見年齢15歳くらい
*『贈る者』に年齢や体重の概念がありません。参考程度

贈る者−青年  固有名詞「オウ」
身長192センチ 体重80キロ(くらい?)
外見年齢28歳くらい

チューリップ先生
外見年齢27歳くらい
身長172センチ 体重???
ナイスバディー(笑)