贈る者−4−

「うわ〜緊張してきた」
 コンはそわそわしていた。
「はははっそんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
 チューリップ先生は優しく笑った。
 彼女は上機嫌だった。
 数年振りの『贈る者』の誕生。
「だって…」
「大丈夫だって…ちゃんと『贈る者』になれたんだから…後は、自分のやり方を見つけてやるだけ…」
 チューリップ先生が頭を撫でた。
「…はいっ!」
「折角オウが『贈り物』してくれたんだから、がんばるんだよ!」
「いってきます!」
「あ、ちょっと待った!」
 コンが勢いで出ようとしたとき、チューリップ先生が止めた。
「はい…?」
「こいつ持ってけ」
 何か、丸い物体を渡される。
「ポ」
 なにか音なのか声なのか発している。
「なんですか…」
「『ポ』」
「は?」
 頭にハテナマーク。
「『ポ』だよ。いないより居たほうがマシ…って感じかな」
「…なんですかそれ…」
「いいから行っておいで!」
 促すと、コンはあちらへと旅立った。

「がんばれよ…」




「はぁ…」
 大きなため息。
 18歳くらいの青年が、雨の中ずぶぬれになっていた。
「風邪、ひきますよ?」
 すっと傘が差し出された。
 そこにはコンが立っていた。
「あ、ありがとうございます…でも、君が濡れてしまうよ?」
 傘を遠慮がちに返そうとする。
「大丈夫。俺は『贈る者』だから濡れても平気なんです」
 コンは笑った。
「は?意味がわからないよ…」
「あ〜なんならまだ出せるから大丈夫ですし」
 コンは笑いながらどこからか傘をもう一本だした。
「へ?」
 青年は自分の目を疑った。
「えーと…加藤正二…さんだよね?」
 更に、どこからか出した紙を見て言った。
「…君、手品師か何か?」
「違うよ…俺は『贈る者』、あなたに『贈り物』を届けにきたんだ!」
 笑顔でそう言った。
「…俺、疲れて夢でも見てるのかな…」
 正二は頭がくらくらした。
「あ〜夢でもない…から…『本当に欲しい物』を持つ人に『贈り物』するのが俺の役目!」
 コンは困ったように笑いながら言った。
「何か、悩んでたみたいだけど…どうしたんです?」
「…夢なら話してもいいか…」
 正二は夢と決め付けて雨の中、話はじめた。
「…俺の親友を庇ってやれなかったんだ…」
「庇って…?」
「そう、他人のケンカに巻き込まれてさ…俺見てるしかできなくて…」
 正二はうつむいた。
 顔が雨に塗れている。
「あいつ、入院するほどのケガしちまって…でも見舞いもいけなくて」
「…なんで?多分親友ならそんなの気にしてないと思うけど…」
「怖いんだ…これで親友じゃなくなったらと思うと」
「ポ〜きっとこれポ〜」
 コンのポケットにいた『ポ』が言った。
「これ…え…あぁ…」
 『ポ』の言いたいことがわかった。
 けれどコンは悩んでいた。
 『何を贈るべきか』

 そして、考え付いた答え。
「…お見舞い行こうよ」
 コンが正二の肩に手を置いた。
「ん…」

――この子の手あったかいな。


「ん?」
 気づくとコンはいなかった。
 だが、居た証拠があった。

「傘…」



「よーう!正二!」
 病室で親友が笑顔で迎えてくれた。
「悪かったな…遅くなって」
「いいって、お前のことだから俺の事助けられなかったとか思ってたんだろ?」
「…」
 正二は頷いた。
「気にするなって!あの時お前が止めに入ってたら、お前もケガしてたかもしれないだろ?俺だけで済んでよかったよ」

「ありがとうな…」
 正二は親友の優しく広い心を改めて思い知った。


「はぁ〜〜『ポ』のお陰でなんとか『贈り物』できた…ありがとうな」
 コンはつぶやいた。
「ポ〜しょうじんするポ〜」

「正二さん、俺の『贈り物』ちゃんと役にたったね…『とにかく行動する』それが俺の『贈り物』。いつまでも親友を大切に!」



「お疲れ様!」
 戻ったコンにチューリップ先生が激励した。
「…幸せですね…この仕事」
「そうだね…まぁ、これからもがんばれ」
 チューリップ先生が微笑んだ。

 コンの顔も笑顔に満ちていた。


FIN

役にたちゃしないキャラ設定

受け取り側−青年 加藤正二
身長172センチ 体重68キロくらい
18歳


謎の生命体。詳細不明。
喋るっぽい。
色々な色がいる。