贈る者−5−ある喫茶店に、赤いパーカーを着た少年が入っていった。けれど、その店も少年も周りの人には見えていない。 『Dream or Reality』 店の看板にはそう書かれていた。 「おやセキ…」 店に入ると、カウンター内に茶色のシャツを着た40前後の男性が居た。 「ササ。またコーヒー飲ませて」 ササと呼ばれた男性は笑うとコーヒーを淹れ始めた。 「久々に先生たちに会ってきたよ」 コーヒーを入れるササを見ながら、セキは椅子に座る。 「ほう、元気でしたか?ヒワマリ先生」 けらけらと笑いながら、コーヒーを淹れる。 「あいかわらず、あつくるしかった…」 「それはそれは…」 苦笑すると、セキはドアを見た。 「くるね…」 「来ますね…」 『Dream or Reality』 「こんなところに喫茶店…?」 店の前で、18くらいの女性が首を傾げていた。 こんなところに、喫茶店などあっただろうか? いつも通る道なのに…。 ドアノブに手をかけ開ける。 ――カラン。 「いらっしゃい」 店内には優しそうな男性と、赤い服を着た少年。 「えと…ここに、お店ありましたっけ?」 カウンターに向かいながら、彼女は言った。 「ありますよ?ずーっと前から」 優しい笑顔の男性は、『どうぞ』と椅子に促した。 「あ、はい…えーっと…メニューは…」 メニューらしいものが見当たらない。 「お客様の飲みたいものが、うちのメニューです。なんでもどうぞ」 「え…じゃぁ、コーヒーで」 椅子に座りながら彼女は言った。 一つ大きなため息をつきながら。 「何かありましたか…?」 コーヒーを淹れながら、男性は聞いた。 「ん…んー…なりたいものになれないって切ないなぁって…」 また一つため息をつく。 「…まーた試験おちちゃった…」 頭をカウンターに預ける。 ふと、目に入った店の名刺を手に取る。 「…もうだめかなぁ…ってさ…」 「そんなことありませんよ…さ、コーヒーが入りましたよ」 そっと、コーヒーを置く。 「いい香り…」 顔を上げてコーヒーカップを取り、ゆっくりと飲む。 ――ぽわんと、気持ちよくなった。 「あれ…?」 気がつくと、何もない壁の前にいた。 「…夢…だったのかな…?」 けれど、手にとった店の名刺が現実だと知らせる。 「試験…もう一度受けてみようかな…」 「めずらしい『贈る者』だよね。喫茶店のメニューで贈るんだから」 セキはコーヒーを飲みながら笑った。 「こんな『贈る者』が居てもいいでしょう…」 ササは優しく微笑んだ。 「そうだね…ご馳走様!また来るからさ」 セキは嬉しそうに店を後にした。 『Dream or Reality〜夢か現か〜』 「『夢を諦めない』という贈り物…ある意味、私の店にぴったりかもしれませんね」 優しく微笑んだ。 FIN |
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役にたちゃしないキャラ設定 受け取り側−女性 身長164センチ かなり細身 18歳 贈る者-固有名詞『ササ』 外見年齢40歳くらい 195センチ(でけぇ…) 体重85キロくらい |