贈る者 番外編−Home−

「お久しぶりです〜」
 ガチャリとドアが開いた。
 ドアが開いた場所には、赤い服を着た少年が立っていた。
「おや、セキじゃないか。久しぶりだな」
 机に向かっていた赤い髪の女性―チューリップ先生は、セキと呼ばれた少年に優しく声をかけた。
「チューリップ先生」
 セキは嬉しそうに笑う。
「おー!セキじゃないか!!」
 チューリップ先生の後ろから体格のいい、金髪の男性が立っていた。
 ジャージを着て、『体育教師』のような風貌。
 たまに、歯がキラリと光る…。
「あ、ヒマワリ先生。お久しぶりです」
 セキはその男性に向かっていった。
「おう、元気そうだな!」
 ばしっと背中を叩く。
「あ…ててっ…そりゃまぁ、『贈る者』に病気とか関係ないですから」
 叩かれた背中を擦りながら、セキはヒマワリ先生と呼んだ男性に笑いかけた。
「そりゃそうだな!にしても…お前みたいに長く『贈る者』やってるやつも珍しいよなぁ」
「そうだな…私の教え子の中でも最長だろうな」
 ヒマワリ先生とチューリップ先生は微笑んだ。
「えー…皆なんでこんな楽しい事やめちゃうんだろう…僕はいつまででもやってたいのになぁ…」
 ゆっくり、チューリップ先生に促されて椅子に座る。
「お前みたいに…一日何件もやるやつが少ないよ…」
 チューリップ先生は笑って、セキの頭を撫でた。
「えー…楽しいのになぁ…ヒトの『幸せ』が僕らには大切なのに…」
「まぁ…楽しいことだけではない…のかもな…私にはわからないが…」
 チューリップ先生は見上げてくるセキに、困ったように答えた。
「キニスルナ!他のヤツは他のヤツ!お前はお前だ!」
 ヒマワリ先生だけが能天気だった。

「そうそう、カスミがお前に会いたがってた…今、連れてくるな」
 チューリップ先生が思い出したように立ち上がる。

「どうだ?あっちは」
 ヒマワリ先生がどかっと、目の前の椅子に座った。
「んー…いつもどおり、喜怒哀楽が混じってる…だから、少しでも…僕たちが役に立てればいいなぁ…」
 困ったように笑うセキに、ヒマワリも笑った。
「まぁ、お前らに出来る事は一握り…でもまぁ、出来ることをやるしかねーだろ?」
 ははは。と、豪快に笑うヒマワリ先生に、なんだか自分がバカらしくなるセキ。
 悩んでても、自分に出来ることは決まっている。
 だったら出来ることをやればいい。

「そうですね!ヒマワリ先生って相変わらずだなぁ」
 セキが笑うと、ヒマワリ先生は笑い返してくれた。

「連れ来てたぞ」
 ガチャっとドアが開いてチューリップ先生が入ってきた。
「あ…」
 セキが立ち上がった。
 チューリップ先生の後ろに、優しそうな面立ちの女性がいた。
「カスミ先生。お久しぶりです」
 ペコリとお辞儀をする。
「おやおや、私達に対する態度と大違いだな…」
 チューリップ先生が皮肉めいた言葉を口にする。
「あ…すみません」
「まぁ、仕方ないか…お前はカスミに頭が上がらないのは知ってるし…」
「もう、鬱金香(うこんこう)たら……久しぶりね…セキくん」
 カスミ先生と呼ばれた女性は、チューリップ先生に『鬱金香』と言った。
「鬱金香…?」
「ああ、私の本名…。あんまり呼ぶ人いないけど」
 チューリップ先生が恥ずかしそうに言った。
 あまり、こんな表情を見せない
「へー…キレイな名前なんですね」
 セキが微笑んだ。
「…そうか…」

「お茶が入ったぞ」
 チューリップ先生の入れたお茶。
 四人で一つのテーブルを囲んでまったりと午後を過ごす。

 最近の出来事。

 取り留めなく。



「もう行くの?」
 カスミ先生が見送りながら寂しそうにした。
「うん。そろそろ次いかないと!」
「もっと遊びに来てね…ここは貴方にとってお家なんだから…」
 カスミ先生、チューリップ先生、そしてヒマワリ先生が微笑んだ。
「はい〜!行ってきます!」
 セキは走り出した。
 『贈り物』を届けに。


FIN